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非公開
【事の発端】
ユスラ王国・リベラ辺境伯管轄の国境付近にて。
この地域では、近頃とある魔獣の出没報告が相次いでいた。
ネコ型魔獣、その名もゾンビニャー。
見た目は子猫くらいの大きさでとても愛らしい姿をしているけれど、ゾンビニャーはある恐ろしい能力を持っているのだ。
◇◇◇
「カナン様~、最近はこのあたりでゾンビニャーが出るって噂です。あまり遠くには行かないでくださいね!」
「分かってる。大丈夫だよ、クレア!」
よく晴れた日の午後。
果南は青い草をさくさくと踏み締めて、緑豊かな森を散策していた。
ユージーンが執務中で暇だったので、メイドのクレアを引き連れて出かけてきたのだ。
愛しい番である果南の希望ということで、ユージーンは二つ返事で外出を承諾したものの『魔物が出るらしいから十分注意するように』と主にクレアに向かって念押ししていた。
とにかく、過保護ぎみな主人をなだめすかして外へ出た果南は、軽い足取りで林を歩いている。
事件が起きたのはその直後のことだった……。
『ニャ――――ンッ!!』
「わっ!?」
「カナン様っ!!」
草むらから突然飛び出してきた小さい物体。
茶色い野良猫のような大きさの体に、黒い翼がふたつ生えている。その羽をバサバサはためかせて、そいつは――果南の腕に噛みついた。
がぷっ!!!
「うわああっ!?」
「カナンさまぁあああ!!!」
これが悲劇のはじまりだった……。
◇◇◇
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