9642字
非公開
文字数オーバーしたので、前半↓にのせます
○
正直、交流イベントなんてめんどくさいなと思っていた。
どうにも、同じ学科の“友人”の彼がDJをするというそれは人が集まらなくて困っているらしく、要は私を出しにして集客をしたいのだと言う。
いつもだったら絶対上手く断るのだが、主催の四年生を含む数人がかりで講義終わりに拘束されて参っていた。
代金も取らないし、二次会で好きなだけ飲んでも良い、過去問もツテでいくらでも代わりに集めてやるなど、正直覚えきれないくらい色々と言われた。
まあ何でもするから来てくれってことなのだろう。
次の講義の時間が迫っており、移動教室のためにも早く出たかった私は、仕方なくそれを承諾したのだった。
「あのさ、ついでに五条にも聞いてみてくんない?」
去り際に、少し言いづらそうに彼は言った。
「言ってみるよ」
とだけ返した。
言うだけさ、絶対あいつは来ない。そう分かっていた。
*
「いやダリィ。行かねえよ」
「だよね」
その日最後の講義終わり、図書館に向かう最中にさっきのことを悟に話した。
私たちの工学部棟から図書館へと続く道はイチョウ並木が植えられていて、季節の変化を感じさせる。
「てかそいつ誰?同じ学科なの?知らねえんだけど」
「いつも君に話しかけたそうに見ているよ。ほら、三限は君とクラスが違うから。彼とは同じでよく話しかけられるんだ」
そんなヤツいっぱいいるから分かんねえよ、なんて言いながら悟は自販機の前で足を止めた。
後ろのポケットに突っ込んであった財布を取り出してボタンを押す。
悟は毎日、この自販機で同じものを買う。
「まあ、過去問やツテはあるに越したことはないし。今回ばかりは諦めて参加することにするさ」
「バックれてやればいいのに。真面目なこって」
ジュースのパックの凹む音をよそに、わたしは隣の自販機で水を買う。
「さすがにそれはしないさ。参加するだけしてとっとと帰るよ」
例のイベントは来週末の金曜日。
レポートも課題も今のところ出ていないし、大丈夫だろう。