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ピンポーン
「宅配ですー」
その小包は、配達員の抑揚のない声と共に唐突にやってきた。
ボールペンでサインをし、荷物を受け取ると
あっしたーと気の抜けた返事をして駆け足で来た道を戻っていく。
なんとなくそれを見守った後、俺は左腕で抱えたその小包を見下ろした。
なんだこれ。
そう、何食わぬ顔で受け取ったはいいものの、この荷物に全くと言っていいほど心当たりがない。
通販はよく使う。日常のものやらなにやら、事ある毎にネット通販。買い物に外に出るなど、コンビニ以外ほとんど無い。出不精を自覚している俺からすれば、配達があることくらい何も不思議なことではないのだが。
必要なものを必要な時にしか頼まないので把握してない荷物は無いはずだが…この荷物は何を頼んだものだっただろうか、思い出せない。
小包を睨みつけながら後ろ手でドアを閉める。
つっかけを脱ぎちらし、リビングでソファに座る。深めに沈みこむ心地良さを感じながら、ビビ…とカッターで小包を開けていく。
中に入っていたのは、
小さな花束だった。