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──たとえ声を失い、痛みの伴う足で生きることになろうとも、私はあなたの隣で共に歩き続けたかったのです──
『天使のそらごと』短編小説第一弾。
声の無い天使ウィリアムは、聖堂に一人住まう少女フェリシアの為に行商市で人魚姫の物語を手に入れる。初めは物語上の人魚姫の選択と自身の現状を重ねていた彼だったが、やがて自身がかつて行った選択の結果と自身の幸福について、改めて見つめなおすこととなる。
ちょこっと人物紹介
ウィリアム(天使様)
声を失った天使。フェリシアの前では無垢で無邪気な天使様でいるが、彼本来の性格はドライで冷血漢。かつて人間として生きていた頃は、千年に一度と言わしめる稀代の吟遊詩人だった。声を発することができないが、魔術的作用を利用した『聲』によって魔術の素養があるものとは会話が可能。彼の聲(セリフ)はその特殊性から作中において『』で表記してある。
フェリシア
町外れの小高い丘に一人住まう少女。神(多神教のうちのとある神)を信仰するシスターであるが、王都にある中央大聖堂に名前が登録されていないため、厳密にはシスターではない。ウィリアムを『天使様』と呼び、神の使いとして信仰する反面、その言動から彼を子ども扱いすることも。ウィリアムの聲が聴こえず、よって彼に関する事は何一つ知らない。
アネモネ
国内でその名を知らぬ者はいないと称される赤毛の大商人。国内最大級の商会『アネモネ商会』を束ねる長でもあるが、その素性は謎が多い。