日清戦争の時、内務大臣だった井上馨は内務大臣を辞任し、臨時公使として朝鮮に赴いた。改革を行おうとしたがうまく行かず一時帰国、再度朝鮮に赴くときに妻武子を同行させたという話から創作しました。
文学的野心のためでなく、自らの信念のために筆を執ることを決めた啄木。しかし、その思いは病のためにどうしようもなくなし崩しになっていきます。家族も次々と病に倒れていく現実の前に、彼はなすすべもなく……。……
大逆事件の判決が出たのちも報道規制と自己検閲が続く中、啄木は土岐哀果(とき あいか)と出会い、雑誌の創刊に奔走します。社会運動の場として雑誌の創刊に賭ける彼は、しかし最近腹が膨れてどうも妙だなと感じて……
働きづめに働く啄木に、唐突な悲劇が降りかかります。生後たった24日で長男を亡くした彼は、我が子を火葬したその日の夜、『一握の砂』の見本刷りを手にしました。どっと自らの疲れを感じた彼は、年明けには夜勤を……
部長に短歌を認められ、二葉亭全集の序文にも名前が載った啄木。彼は平凡というものを思い、これが幸せなのだろうかと考えます。一方、世間は何かときな臭くなっていき、社会主義者が次々と逮捕される中、リーダー格……
真面目に働きだした啄木は、少しずつ着実な手ごたえを感じるようになります。職場で信頼関係を築き、離散していた家族がそろい、家計にも好転のきざしが見え始めた彼に再び春がめぐってきます。桜散る夜、一人で原稿……
誰とも会話することなく、孤独を深めていく啄木。家族との溝が深まる中、とうとう妻が実家に帰ってしまいます。啄木はそのことに愕然とし、己の身を振り返りますが、そこで得た彼の結論とは……? 彼の「新しい生活……
人の善意に頼り切って、ようやく家族を東京に迎えた啄木。しょうがなく会社に出勤する彼は、ある朝、妙な男を見ます。それは社会主義者を尾行して、徹夜明けの警官だと人びとは噂しますが…?
会社をさぼって小説を書くも、まったく筆が進まない啄木。そんな中、季節は五月へと移り、彼は二葉亭四迷死去の報を聞きます。
石川啄木が主人公の小説です。身勝手で、ひとの痛みを知らない人間にも、春は、幾度となくめぐります。